俳句の作り方 寒烈風と雪の俳句

 今週は「愛」がテーマです。

 

 寒烈風見果てぬ夢の母の愛  堀口星眠ほりぐちせいみん

かんれっぷう みはてぬゆめの ははのあい

寒烈風が冬の季語。

 星眠の母親は寒烈風のような厳格な女性だったのでしょう。

身を切り刻む激しいかぜ。

しかも寒の風。

(寒とは24節気のひとつで立春前のほぼ30日間)

そんな風のような星民の母。

東大医学部の受験勉強中、寒い部屋に夜食を運んでもらえたのでしょうか?

いいえ、𠮟咤激励の声が響いていたにちがいありません。

星民は優しく暖かい母の愛に飢えかつえていたのです。

それが叶わぬので「見果てぬ夢」と表現したのです。

寒烈風見果てぬ夢の母の愛

 堀口星眠について・・・。

1923年生まれ2015年没。

24歳で東大医学部卒。

その後東大医学部附属病院の医師となる。

20歳より「馬酔木(あしび)」に投句して水原秋櫻子みずはらしゅうおうしに師事。

馬酔木高原派と呼ばれ新風を吹き込む。

以降、数々の賞を受賞する。

 寒烈風見果てぬ夢の母の愛

 

 

 次の愛の俳句をご紹介します。

けふ豊か霙のち雪そして愛  矢島渚男やじまなぎさお

きょうゆたか みぞれのちゆき そしてあい

霙と雪が冬の季語。

 句意を申し上げます。

今日は心豊かに過ごせた。

霙が降ったかと思うと雪になった。

世界は真っ白。なんて美しいんだ。

ああ、そして私には愛し愛される人がいる。

今日は心豊かな一日である。

 鑑賞。

「そして」が利いています。

筆者は真似しようとは思いません。

接続詞「そして」の扱いは、はなはだ高等技術を要するからです。

しかし掲句では「そして」が成功しています。

けふ豊か霙のち雪そして愛

 

 矢島渚男について・・・。

1935年生まれ2023年現在存命中。

東大文学部国史学科卒業。

大江健三郎と同期。

卒業後は故郷の長野県の高校で歴史の教鞭をとる。

 石田波郷いしだはきょうや加藤楸邨かとうしゅうそんに師事。

数々の賞を受賞。

85歳の時、旭日小綬章を受章する。

 けふ豊か霙のち雪そして愛

俳句の作り方 寒烈風と雪の俳句” に対して1件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    愛の句かぁ。人に対する愛もあれば、自然に対する愛もあるし、僕は好きなヨットへの愛もあるし。
    自分の事で恐縮ですが、まだ河の会員になる前に、角川春樹氏が出版していた「ランティエ」という雑誌があり、メールで一行詩
    を募集していて、そこに全く俳句に縁の無かった私も投句したんですが、2度目ぐらいの投句で、いきなり特選頂いて驚いた事があります。
     「もういいかい」母の隠れし花浄土 と云う句でした。
    思えば、今でも俳句を続けているのは、それがきっかけのような気がします。
    私の母は、無学な人でしたが、父に対する愛だけは深かったように思いますy子供心にもそれは感じました。

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